2024/04/19

NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編

NPS®は意味がないといわれる理由とは?日本のスコアが低い原因を解説

NPS®は事業成長とも関連性があり、多くの企業がベンチマークとして活用している重要な指標です。しかし、日本ではNPS®のスコアがマイナスになることも多く、プラス傾向にある海外の企業と比較するのは意味がないといった意見も見られます。日本でマイナスのスコアが出やすいのは国民性にも関係しているため、理由を認識して結果を正しく活用することが重要です。

本記事では、NPS®の概要やNPS®は意味がないといわれる理由、NPS®を上げるポイントなどについて解説します。NPS®に本当に意味があるのか不安に思っている企業のご担当者は、ぜひ参考にしてください。

この記事の内容
  • 日本では曖昧な中間の回答を好む傾向があり、NPS®スコアがマイナスになりやすい
  • NPS®は推移の確認や比較で活用する指標。商習慣などが異なる海外の企業と比較することはそれほど重要ではない
  • NPS®はベンチマークとして活用でき、業界内における自社のポジションを把握できるなど意味がある指標

NPS®は意味がない?そもそもNPS®とは?

NPS®とは「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」を略したもので、顧客ロイヤルティを数値化した指標です。近年、商品やサービスの価格や機能だけで競合他社と差別化を図ることが難しいなか、CX(顧客体験価値)を重視する考え方により注目を集めています。

また、NPS®は事業成長との相関性も認められており、自社商品やサービスを推奨する顧客を客観的に把握できることなどから、ベンチマークとして活用することも可能です。現に欧米では売上上位の企業の多くがNPS®を活用しており、日本でも多くの企業が取り入れています。

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顧客ロイヤルティ(顧客ロイヤリティ)とは?向上させるメリットと事例

NPS®の計算方法(推奨者ー批判者)

NPS®のスコアを算出するためには、まず「自社の商品やサービスを友人や知人にどの程度お勧めしますか」といった質問を行い、0〜10の11段階の回答を得ます。0~6点をつけた人を「批判者」、7~8点をつけた人を「中立者」、9~10点をつけた人を「推奨者」に分類し、回答者全員に占める推奨者の割合(%)から批判者の割合を引いてNPS®スコアを算出します。

例えば、推奨者が70%、批判者が30%の場合の計算式は以下のとおりです。

NPS® =70(推奨者)- 30(批判者)= 40

計算方法の特性上スコアがマイナスになることもありますが、それ自体は気にする必要はありません。NPS®は現状を認識し、スコアを高めることに意味があります。

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NPS®は意味がないといわれる理由

ここからは、NPS®は意味がないといわれる理由について解説します。

NPS®と顧客満足度が相関しているから

顧客満足度と、顧客ロイヤルティを測るNPS®は相関しているため、両方を計測する必要はないとの見方もあります。ただし、相関しているからといって、一方の指標が他方の代わりになるとは限りません。

商品やサービスに満足しているにもかかわらず、ロイヤルティが低いケースはあります。その場合、たとえ今は満足していても、より安価な商品やニーズに合うサービスがあれば乗り換えてしまうこともあるでしょう。反対にロイヤルティが高い場合、商品やサービスに不満があっても使い続けるケースがあります。

実際に、商品やサービスを解約した顧客の8割が、直近の顧客満足度調査で「満足している」と回答したといったデータもあります。

たとえ数値に相関性があっても、両者の性質の違いから実際の顧客行動には違いが見られるため、片方の情報に頼るのではなく両方を測定することが必要です。

すぐに業績が良くなる訳ではないから

自社のNPS®を調査したからといって、すぐに業績が良くなるわけではありません。特にリソースや顧客が少ない中小企業などはNPS®調査ではなく、顧客の獲得に注力したほうが良い場合もあります。ただし、業種によっては企業規模にかかわらず調査を実施しやすいケースもあるため、アンケートの回答を得るために必要なコストで判断するのも一つの方法です。

確かに、NPS®調査を行うとすぐに業績が良くなる訳ではありませんが、企業の業績と相関関係があることはわかっています。Satmetrix社のホワイトペーパー「THE POWER BEHIND A SINGLE NUMBER」では、複数の業界400社以上の企業・ブランドで調査を行った結果、NPS®は企業の売上高成長率と高い相関関係があるとされています。

また、NTTコム オンラインが実施したベンチマーク調査でも、NPSが高い生命保険会社ほど保有契約高の年平均成長率が高い傾向にあるなど、NPS®と企業成長との相関関係が見てとれます。

出典
slideshare|Net Promoter Score: The Power Behind A Single Number
NTTコム オンライン|【NPS®(顧客推奨度)ベンチマーク調査】 生命保険おすすめランキング

日本企業の平均スコアが海外に比べて低いから

以降で詳しく解説しますが、日本の顧客は他の国より満足度やロイヤルティの点数を低くつける傾向があります。そのため、質の高い製品やサービスを提供している企業であっても、海外に比べてスコアが低くなりがちです。日本では上位企業のスコアのほとんどがマイナスになっていることも、NPS®は意味がないといわれる理由の一つといえます。

1 日本人は中間回答を好む傾向がある

日本人は極端な回答を避け、曖昧な中間の回答を好む傾向があります。一方、アメリカでは極端な回答を好む傾向が見られます。このような国民性が要因となり、日本は他の国と比べて満足度やロイヤルティの点数を低くつけがちです。例えば、実際のNPS®の中立の評価は7~8点ですが、日本人は5を中間点と捉える傾向があり、その結果アメリカよりもスコアが低くなります。

日本人における回答の傾向を調査した論文「日本人の回答バイアス」の中でも、日本を含むアジア人はアメリカ人に比べて中間の選択肢を選ぶといったデータが出ています。

出典:日本人の回答バイアス 1 ― レスポンス・スタイルの種別間・文化間比較―

2 日本人に合わせた指標のPSJ

上述したように日本のNPS®はマイナスになりやすいことから、日本人の特性に合わせてより実態に即したデータが得られる「PSJ(Promoter Score Japan)」を活用するケースも見られます。PSJは、NPS®を基にした日本版の改良型指標です。推奨度が8~10の人を「推奨者」、5~7の人を「中立者」、0~4の人を「批判者」に分類します。

ただし、PSJを用いたスコアはNPS®と同列で比較できなくなります。スコアの絶対値にそれほど意味を持たないため、使い所が難しい指標です。

NPS®は推移の確認や比較に使う指標

NPS®は推移の確認や他社比較で活用することで、施策の成果や業界でのポジションを認識できる指標です。定期的にNPS®調査を行い推移を確認することで、取り組みが顧客からどのように評価されているのかを把握できます。調査結果から自社の相対的な強み・弱みを把握し、改善に役立てることが可能です。

NPS®のスコアの傾向は日本と海外で異なりますが、それほど気にする必要はないでしょう。商品やサービスの特性、商習慣などが異なる海外の企業と比較することはそれほど重要ではなく、同じマーケット内で比較することのほうが重要です。海外進出している企業であれば、海外の消費者に調査を行い現地の企業と比較すれば良いでしょう。

NPS®の活用には多くの意味がある

NPS®を活用する意味は多くあり、まず専門知識がなくても運用しやすい点が挙げられます。NPS®は自社商品やサービスの推奨度を問うシンプルな調査なので、専門知識がなくても実施可能です。スコアもシンプルな計算式で簡単に算出できるため楽に運用できます。また、設問数が少なく、回答を得やすい点もポイントです。NPS®は0~10までの点数を付けるだけと回答者にも負担が少なく、サンプルを集めやすい方法といえます。

また、NPS®は全社共通の指標としても活用でき、KPIの一つとする企業が多いのも特徴です。さらに同業他社との比較がしやすく、ベンチマークとしても活用できます。NPS®調査は、業界内における自社のポジションを把握したい企業にもおすすめです。

NPS®を上げるには?改善に役立つポイントを解説

以降では、NPS®を上げるためのポイントについて解説します。

【関連記事】
NPSを向上させる5つの取り組みとは?数値向上の重要性や事例も紹介

NPS®に影響の大きな要因を特定する

NPS®に影響の大きな要因を特定する際に有効なのが、「4象限分析(アクションドライバー分析)」です。まずは、NPS®に影響度の高い要素を導き出すため、縦軸を「推奨度との相関係数」、横軸を「各要素の満足度の平均」とするアクションドライバーチャートを作成しましょう。

続いて、以下のように4象限のマトリクスを作成します。

優先改善項目 重点維持項目
注意観察項目 基本維持項目

各象限を「重点維持項目」「優先改善項目」「基本維持項目」「注意観察項目」とします。どの象限にどの要素が当てはまっているかを確認することで、推奨度への影響度・重要度を把握することができます。

以下は、各象限の特徴です。

  • 重点維持項目(チャート右上)
    商品やサービスが選ばれる理由など、自社の強みを把握できる項目です。推奨度への影響が大きいため注力すべき項目です。
  • 優先改善項目(チャート左上)
    推奨度への影響が高い重要な項目にも関わらず、顧客満足度が平均よりも低いことを示します。例えば、商品の使いやすさやサポート品質など、優先的すべき課題を把握できます。
  • 基本維持項目(チャート右下)
    顧客満足度は高く、推奨度が低いことを示す項目です。顧客に評価されるポイントではないものの、現状の満足度は高い状態なので、提供する商品・サービスの品質を落とさないことが重要です。
  • 注意観察項目(チャート左下)
    顧客満足度・推奨度ともに低い項目です。急いで施策を実施する必要はないですが、状況の変化を継続的に観察しておく必要があります。

リレーショナル調査・トランザクショナル調査を使い分ける

NPS®調査でよく使われるのが「リレーショナル調査」と「トランザクショナル調査」です。

  • リレーショナル調査:自社商品やサービス全体の推奨度を総合的に調査する手法。改善点や自社の強み・弱みを把握できる
  • トランザクショナル調査:施策や事業所・店舗(タッチポイント)ごとに顧客体験を調査する方法。施策ごとの課題を把握でき、個別の利用体験後に実施するのが一般的

まずはリレーショナル調査で優先して改善すべき点を特定し、続いてトランザクショナル調査を行うとより効果的です。

全社で共有する

NPS®の推移や分析結果は全社で共有し、連携を強化することが重要です。改善ポイントやフォローアップの進捗状況、評価されている点などを共有することで、社員が同じ方向を向いて取り組める、モチベーションが向上するなどのメリットがあります。結果を共有することで改善スピードも速くなり、より多くのPDCAを回すことが可能となります。

適切なアンケート設計や分析を行う

NPS®調査では主となる質問に加え、調査の目的やビジネスモデルを加味した質問も行いましょう。質問の内容や順番などのアンケート設計を誤ると、有効な回答が得られない恐れもあるので注意が必要です。

また、結果の分析にもスキルが求められ、適切な分析ができなければ効果的な改善アクションにつながりません。NPS®調査の効果を高めたいのであれば、NPS®の運用ツールやコンサルティングを検討することもおすすめです。

【関連記事】
NPSの分析方法とは?定量分析・定性分析の具体的な手法を解説

NPS®の運用をサポートする「NPX Pro」

CX向上を目指す企業におすすめなのが「NPX Pro」です。NPX Proは顧客のフィードバックを分析して改善アクションの促進までを実現するツールで、顧客ロイヤルティの向上にも寄与します。NPX Proの主な機能は以下のとおりです。

  • NPS®アンケート作成、配信
  • NPS®アンケート集計、分析
  • NPS®アンケート分析結果の共有
  • 改善アクションの促進・管理

分析結果はアクションドライバーチャートで視覚的にわかりやすく表示され、優先的に改善すべき課題をタイムリーに把握できるのが特徴です。また、アラート機能を搭載し、顧客のネガティブな声を迅速に検知することもできます。さらにカスタマージャーニーも可視化でき、タッチポイントごとの調査や複数のタッチポイントを横断したショートタームジャーニー調査を行えるなど、総合的な顧客体験の向上を支援します。

導入事例|株式会社 日立ハイテクサイエンス 様

日立ハイテクグループの分析計測装置メーカー「株式会社 日立ハイテクサイエンス」様は、自社独自のアンケートにより顧客満足度を実施されていました。しかし、運用方法や設問内容などがこれで良いのだろうかとの悩みからNPX Proを導入されました。

導入後すぐに、コンサルタントの存在がとても心強く感じられたそうです。また、テクニカルサポートの対応も迅速・的確で、すぐに問題を解決できた点も評価されています。もっとも良いと感じているのがアクションドライバー分析で、4象限のマップにより製品や対応の強み・弱みが可視化でき、課題へ迅速に対応できるようになったと満足されています。

NPS®は意味のない指標ではない

日本企業のNPS®スコアは海外に比べて低いことや、NPS®の調査後すぐに業績が良くなるわけではないことなどから、NPS®調査は一見意味がないと思われがちです。しかし、NPS®の結果は全社共通の指標として用いることができるほか、ベンチマークとしても活用できます。また、シンプルな計算式で運用しやすい点も魅力です。

NPS®調査の効果を高めたいのであれば、NPS®運用ツールであるNPX Proの活用をおすすめします。NPS®の基本情報からNPS®分析レポートまで各種資料もご用意しているので、ぜひご活用ください。

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