2023/08/25
NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編
ブランド戦略とは?得られる効果や具体的なステップ、失敗例や成功例を紹介
企業がより多くの利益を獲得するためには、自社のブランド価値を高める「ブランド戦略」が必要不可欠です。しかし、ブランド戦略についてよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ブランド戦略の基礎知識を踏まえつつ、得られる効果や具体的なステップ、参考となる失敗例・成功例などについて解説します。ブランド戦略への理解を深められる内容なので、ぜひお読みください。
- ブランド戦略とは、ステークホルダーが共通して抱くブランドに対するイメージを作り上げる戦略のこと。
- ブランド戦略に取り組むことで、他社との差別化や顧客ロイヤルティの醸成、利益率の向上といった有益な効果を得られる。
- ブランド戦略は目的設定・イメージの具現化・成果の確認など、複数のステップから構成されるので、順を追って対応することが大切。
ブランド戦略とは
まずはブランド戦略の概要およびブランディングとの違いを解説するので、基礎知識として押さえておきましょう。
ブランド価値を高めるための戦略
ブランド戦略とは、ステークホルダー(企業の利害関係者)が共通して抱く自社のブランドに対するイメージを作り上げる戦略のことです。より簡潔に説明すると「自社のブランド価値を高めるための戦略」という意味になります。
ブランド戦略の具体例としては、以下のような施策が挙げられます。
- ブランド・アイデンティティの定義
- ブランドメッセージの作成
- ターゲットの設定
- ポジショニングの決定
このブランド戦略が成功すれば、マーケティング全般を有利に進められるため、より多くの顧客に自社の商品を選んでもらえます。
ブランディングとの違い
ブランド戦略とブランディングは混同されがちですが、実際は意味が異なります。ただし、この2つの言葉は密接な関係にあるため、全くの別物ではないのです。
ブランド戦略は先述の通り、自社のブランド価値を高めるための全体的な戦略を指します。一方、ブランディングは戦略を実行し、ブランド価値を市場に伝えるためのプロセスを指すものです。
ブランディングの具体例を挙げると、以下のような施策があります。
- ロゴやデザインの変更
- コンテンツマーケティング
- SNSマーケティング
ブランディングの方針はブランド戦略によって決まるので、ブランド戦略のほうが上位に位置します。
ブランド戦略がもたらす効果
ブランド戦略がもたらす効果は、以下の通りです。
- 他社との差別化
- 顧客ロイヤルティの醸成
- コスト削減や利益率の向上
それぞれ詳しく解説します。
他社との差別化
ブランド戦略に取り組めば、企業は商品やサービスの認知度が高まるだけではなく、競合他社と区別しつつ顧客に特別な価値を提供できます。自社ならではの強みや魅力を伝えることで、顧客は単に価格や機能だけではなく、ブランドの価値に基づいて購買アクションを起こすようになるのです。
差別化の成功によって「〇〇の商品だから購入する」という段階まで行き着けば、市場において高い競合優位性を獲得できます。その結果、自社の商品が競合他社のそれと比較せず購入されるようになるため、不毛な価格競争に巻き込まれることなく、健全な経営を実現できるのです。
顧客ロイヤルティの醸成
顧客ロイヤルティとは、顧客が企業(商品)に対して感じている愛着や信頼のことです。一貫した世界観やメッセージの提示、SNSによるコミュニケーション促進といったブランド戦略により、ブランドに対する顧客ロイヤルティを高めることができます。
ブランド戦略が成功すれば、顧客ロイヤルティの向上によって顧客との長期的な関係を築くことが可能です。その結果、リピート率も向上するので、顧客は自社の商品やサービスを継続的に購入してくれるようになります。
コスト削減や利益率の向上
強いブランドを確立すると、商品の認知度やリピート率が高まるので、わざわざ広告を打たなくても安定した利益を確保できます。そのため、広告宣伝費やプロモーション活動に関する人件費といったコストを削減可能です。
また、競合他社との価格競争から脱却できる、既存顧客が家族や友人にリコメンドしてくれるなど、利益率を向上させる多くのメリットが発生します。顧客が価格に左右されず、ブランド自体の価値を認識していることを意味するものです。
ブランド戦略の具体的なステップ
ブランド戦略を立てるためには、目的設定から成果の確認まで6つのステップを踏む必要があります。
そこで、各ステップの概要をまとめました。
1|目的設定と現状把握
まずはブランド戦略でどのような成果を求めるのか、具体的な目的・目標を考える必要があります。戦略全体の方針に関わるポイントなので、顧客に与える影響はもちろん、社内やリクルーティングへの影響も踏まえて検討しましょう。
また、市場での立ち位置や顧客のブランドに対する認識など、市場分析を行って現状を把握することも重要です。自社の現状がわからなければ、ブランド戦略で目指すべきゴールも設定できません。
市場分析を実施する際は、3C分析・SWOT分析・カスタマージャーニーマップといったフレームワークの活用をおすすめします。
2|課題・強みの洗い出し
市場分析によって判明した現状の課題や強み、他社との差別化ポイントなどを整理し、ブランド戦略に必要な材料を洗い出しましょう。顧客に何をアピールすべきなのか、競合他社より何がどう優れているのかといった点を明確化すれば、ブランディングに役立つヒントを得ることができます。
また、上記で挙げた調査内容はターゲットの設定にも影響します。ターゲットとブランド戦略の内容がマッチしていないと、十分な効果が見込めないため、慎重に調査しなければなりません。。
3|ブランドの構成要素の策定
ブランドの構成要素と一口にいっても、さまざまな種類があります。ブランドの価値観であるブランド・アイデンティティ、企業のビジョンやカルチャー、ステークホルダーに与える体験といったものが代表的です。また、企業の戦略的意図や社会的責任、顧客からの信頼なども構成要素に含まれます。ブランド戦略を検討する際は、これらを詳細に策定しましょう。
なお、ブランドの構成要素に関しては、確かな根拠がある内容にすることも大切です。企業の歴史や経営理念、時代の移り変わりによる変化を考慮して、根拠となるポイントを調査しましょう。
4|ブランドイメージの具現化
ブランドの構成要素を策定したら、それをベースにブランドイメージを左右する要素を具現化しましょう。具現化の方法はさまざまですが、大きく分けると「抽象メディア」「可視メディア」の2種類があります。
抽象メディアとは、ブランドにまつわるキャッチコピーやストーリーのことです。一方、可視メディアは抽象メディアを形で表現したロゴやデザインのことを指します。
どちらも統一したコンセプトに基づいて作り上げ、ブランドを連想させる必要があります。また、いずれも目に見えない価値であるブランドエクイティに関連する要素なので、それも踏まえてアウトプットしましょう。
5|具体的な戦略の策定・実施
ブランドイメージを具現化したら、次はブランド戦略に取り組むための具体的な方法を策定・実施します。こちらもさまざまな方法がありますが、認知度拡大を目的とする広告やSNSを使ったマーケティング、商品の価値を実際に感じられるオフラインイベントの開催といったものが代表的です。
特に最近はインターネット上で情報を集める顧客が多いので、YouTubeで商品の魅力を伝える動画を配信したり、有名なインフルエンサーにレビューを依頼したりすると、ブランドイメージも向上しやすくなります。
各施策でどのようなポイントをアピールすべきか、慎重に検討しましょう。
6|成果の確認と改善
ブランド戦略は当初の狙い通りに進むとは限らないので、想定外の遅れや問題が発生する可能性もあります。そのため、ステークホルダーの反応を確認しながら、必要に応じて適宜修正などを行うことが大切です。
特に重要な顧客からの評価を確認する場合、顧客ロイヤルティを測定する指標である「NPS」を活用しましょう。NPSは「ネットプロモータースコア」の略称ですが、アンケート調査をもとにロイヤルティを数値化し、顧客体験の評価・改善につなげるというものです。
NPSは多くの企業で採用されており、収益性との相関が高い指標としても知られているので、ベンチマークとしても信頼できます。NPSで自社の強みや改善点を把握・調整することで、ブランド戦略の質を高められるでしょう。
ブランド戦略の失敗例
ブランド戦略は企業にとって有益な効果をもたらしてくれますが、それは成功した際の話です。もしブランド戦略に失敗した場合、資産の損失や企業のイメージ悪化など、マイナスの効果が生じる可能性もあります。
実際に起こったブランド戦略の失敗例を紹介するので、こちらも併せてご確認ください。
- ロゴの変更
アパレルブランドにおいて、変更後のロゴが著しく不評だったことで、数日のうちに元のロゴに戻し、100億円以上の損失が発生。 - 広告の表現
ファッションブランドのテレビCMの内容が特定の文化を侮辱している内容だと指摘され、不買運動が発生。謝罪するも最終的に同ブランドは撤退を表明。 - 顧客ニーズと乖離した戦略
ファストフード店でヘルシーフードを提供したもののファストフードに来客する顧客ニーズに合わず商品はヒットせず。
失敗の原因は、顧客と企業の認識ズレやコンプライアンスに対する認識不足、市場の流行を優先してブランド・アイデンティティに基づいた価値を提供できていないなど、さまざまな原因が考えられます。
ブランド戦略の成功例
続いてブランド戦略の成功例も紹介します。ブランド戦略を実施した背景や業界事情、具体的な内容についてまとめました。
ヤンマーホールディングス株式会社
ヤンマーというと50年以上続いた「ヤン坊マー坊天気予報CM」のほか、トラクターやコンバインといった農業機械のメーカーとしても知られています。現在は建設機械やエネルギーの分野でも事業を展開していますが、そちらはあまり知られていません。
ヤンマー=農業機械というイメージから脱却するため、2012年の創業100周年を機にブランド戦略のプロジェクトをスタート。高級感漂うブランドを目指して、トンボの王様「オニヤンマ」の羽とヤンマーの頭文字「Ý」をモチーフにした、先進的でスタイリッシュなロゴを制作するなど、大幅なリニューアルを行っています。
スターバックス
アメリカ発祥のスターバックスは、日本でも多くの店舗を展開している大手カフェチェーンです。「人」「コミュニティ」「地球」の3つを大切しつつ、独自のブランド戦略に取り組んでいます。
スターバックスは一般的な企業と違い、CMや広告を一切打っていません。しかし、メディア上ではなく店舗体験によるブランディングに特化することで、他のカフェにはない高いホスピタリティを実現しています。
その一方、公式サイトでコーヒーに関する多彩なコンテンツを提供したり、SNSでフォロワーと密にコミュニケーションを図ったりするなど、デジタルツールを活用したブランド戦略も行っています。
株式会社 星野リゾート
星野リゾートは全国各地のリゾートホテルや温泉旅館、スキー場などを運営する企業です。ブランド力の長期的な目標設定および市場調査による測定を行いつつ、リスクを抑えたブランド戦略に取り組んでいます。
アメリカの経営学者であるデービッド・A・アーカー氏の書籍を教科書として、星野リゾートはすべての商品やサービスにマスターブランドを付与する「マスターブランド戦略」に寄せた、独自のサブブランド戦略を採用。このブランド戦略を決める際は、外部から専門家を呼んで社内議論への参加を依頼しています。
各施設を特徴ごとに分けてサブブランドを設定しつつ、マスターブランドである「星野リゾート」を付けることで、集客のスケールメリットを得ながら、外資系ホテルとの差別化を実現しています。
ブランド戦略に重要なロイヤルティの測定には「NPX Pro」
ブランド戦略の目的や課題を考えたり、改善施策に取り組んだりする場合、ロイヤルティを測定することが重要です。
ロイヤルティの測定を行うなら、NPSツール「NPX Pro」の導入をご検討ください。CX(顧客体験)を改善し、ロイヤルティを向上させることで、より確実かつ効率的に顧客との長期的な関係を構築できます。
NPX Proの主な機能は、以下の通りです。
- アンケート作成・配信・回収
- アンケート集計・分析
- アンケート分析結果の共有
- 改善アクションの促進・管理
NPX Proの導入事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
導入事例1|楽天トラベル 様
楽天トラベル様では、2016年から楽天グループ全体でNPSの活用が始まったことを機に、NPS調査が導入されました。四半期に一度ブランド価値を測るリレーショナル調査、各事業部単位で毎月行うトランザクショナル調査を実施することで、NPSに関する活動を検証しています。
NPX Proの導入後、細かなデータを調査するトランザクショナル調査の頻度が増えるとともに、顧客の声がサービス提供者に直接届くようになったため、より効果的かつ迅速な改善ができているとのことです。例えば「予約の変更・キャンセルの情報がわかりづらい」という声に対し、すぐに予約完了メールの改良を行っています。
導入事例2|株式会社 ライフウェル 様
株式会社ライフウェル様は競争が激しいフィットネス業界において、独自のポジションを確立しています。大手に対抗できるよう、顧客一人ひとりのロイヤルティを高めて、長期的な関係を築くという戦略を採用している点が特徴です。
ライフウェル様では、以前から顧客満足度調査を行っていましたが、ファンの満足度を細かく把握できない、改善アクションにつなげにくいといった課題を抱えていました。
しかし、NPSを導入することで、各店舗のロイヤルティを測定しつつ、具体的な改善アクションも迅速に取り組めるようになり、安定した売上・利益を実現できています。
導入事例:株式会社 ライフウェル 様ブランド戦略は長期的な事業成長に必要
自社のブランド価値を高めるブランド戦略は、他社との差別化や顧客ロイヤルティの醸成、利益率の向上といった効果を得られるため、長期的な事業成長には欠かせない戦略です。
ブランド戦略に取り組む場合、目的設定やイメージの具現化、成果の確認・改善といった複数のステップを踏まなければなりません。その過程で自社の課題や顧客ニーズ、ロイヤルティなどを調査する必要があるため、分析・測定の方法なども押さえておきたいところです。
ロイヤルティの測定ツールなら、アンケート分析や改善アクションに関する豊富な機能を備えた「NPX Pro」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。まずは、下記のリンクからダウンロードできる資料をご覧ください。
https://www.nttcoms.com/service/nps/whitepaper/
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