2024/03/14
NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編
定着率とは?離職率との違いや高い会社の特徴、数値を上げる7つの方法を解説
企業の魅力を示す指標の一つとなる「定着率」。高い定着率は、従業員が自社に満足して働ける環境が整っていることの一つの判断材料となり、企業の業績向上にもつながる要素です。そのため、定着率が低い場合は迅速に改善施策を実施すべきでしょう。
本記事では、定着率の概要や計算方法、定着率を高めることの効果などについて解説します。また、あわせて定着率を向上させるステップも紹介するので、従業員の定着率を改善したいと考える企業の担当者様は、ぜひ参考にしてください。
- 定着率とは、就職後に一定期間働き続けた従業員の割合
- 定着率を高めることで、「採用・人材育成のコストを抑えられる」「 仕事へのモチベーションが向上する」「業績が向上する」といった効果が期待できる
- 定着率を上げるためには、「人材配置を最適化する」「ワークライフバランス実現に向けた制度を導入する」「給与水準や福利厚生を充実させる」などが必要
従業員の定着率とは?
まずは、定着率の概要や計算方法、計測する期間、離職率との違いなどについて解説します。
定着率とは「就職後に一定期間働き続けた従業員の割合」
定着率とは、就職後に一定期間働き続けた従業員の割合を指す指標です。「定着率が高い」とは従業員の離職が少なく、組織の体制が安定している状態といえます。一方、「定着率が低い」とは従業員の離職が多い状態を指すため、組織になんらかの問題がある可能性が高いと考えられます。
定着率や離職率を公表している場合、他社と比較されるため採用活動に影響が出るでしょう。定着率が高いことで働きやすい環境だと判断でき、求職者が企業を選ぶ際の指標となります。
定着率の計算方法
定着率は以下の計算式で求められます。
「定着率(%) = 現在の在籍従業員数 ÷ 入社時の従業員数 × 100」
例えば、入社時の従業員数が100人で現在の在籍従業員が70人の場合、計算式は以下のとおりです。
定着率 = 70 ÷ 100 × 100=70%
上記の計算式で簡単に定着率を算出できますが、計測期間中に入社した従業員も含まれてしまいます。正確な値を出すには計測期間中に入社した従業員数は含まないため、以下の計算式を用います。
「定着率(%)=(○年前の入社人数 - ○年間の離職人数)÷ ○年前の入社人数 × 100」
例えば、入社時の従業員数が100人で、3年間で10人が辞めた場合、3年間での定着率は以下のとおりです。
定着率 =(100 - 10)÷ 100 × 100 =90%
その2年後にさらに3人辞めた場合、直近5年間での定着率は変わってくるため、定着率は計測する期間によって変動する点に注意しましょう。
定着率を計測する期間
定着率を計測する期間は年単位が一般的で、年度初めの4月から翌年3月までを計測期間とする企業が多く見られます。さらに俯瞰してデータを確認したい場合は、3年や5年などの期間で計算するケースもあります。なかでも新卒者の定着率を測る際には、3年の期間を用いることが多いでしょう。
とはいえ、業界や業種によっては従業員の離職が多い企業もあるため、自社の業界や特性、目的にあわせて計測期間を調整する必要があります。
離職率との違い
定着率と対になる指標が「離職率」で、一定期間にどれくらいの従業員が離職したかを表します。なお、定着率と離職率を足すと100%になるため、計測期間における定着率が70%の場合、離職率は30%です。
定着率とは反対に、離職率が高いと組織になんらかの問題が潜んでいる可能性も考えられます。ただし、離職率が低いことが必ずしも悪いこととは言い切れません。特に、スタートアップ企業やベンチャー企業ではキャリアアップのために早期退職するケースも多く見られます。
定着率が重要視されている背景
定着率が重要視されている背景の一つとして、少子高齢化による生産年齢人口の低下が挙げられます。内閣府が発表した「令和4年版高齢社会白書」によると、15~64歳の生産年齢人口は1995年をピークに減少が続いています。
生産年齢人口の減少は今後も続く見通しで、それに伴い採用競争が激化しているのも定着率が重要視されている要因の一つです。また、従業員の価値観が多様化し、ワークライフバランスを求めるビジネスパーソンが増加していることも、定着率が重要視される背景にあります。企業はそれぞれの従業員に合わせた働き方を提供する必要があり、定着率の向上に取り組むことで優秀な人材の維持・確保が期待できるでしょう。
国内企業における定着率の平均値とは?
ここでは、国内全体や就業形態別、産業別、新卒者の平均定着率を紹介します。
全体・就業形態別の平均定着率
厚生労働省が発表した「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、2022年時点の国内全体の従業員定着率は85.0%です。これは複数の就業形態や業種などを含めた数値ですが、年間約7人に1人が離職していることになります。
ただし、これはパートタイム労働者も含めた数値なので、正社員のみに比べて数値が低くなっています。就業形態別に見ると、正社員の定着率は88.1%、パートタイム労働者の定着率は76.9%です。
産業別の平均定着率
2022年時点の産業別の平均定着率は以下のとおりです。
産業 | 定着率 |
---|---|
鉱業、採石業、砂利採取業 | 93.7% |
金融業、保険業 | 91.7% |
学術研究、専門・技術サービス業 | 90.0% |
製造業 | 89.8% |
建設業 | 89.5% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 89.3% |
複合サービス事業 | 89.0% |
情報通信業 | 88.1% |
運輸業、郵便業 | 87.7% |
不動産業、物品賃貸業 | 86.2% |
卸売業、小売業 | 85.4% |
教育、学習支援業 | 84.8% |
医療、福祉 | 84.7% |
生活関連サービス業、娯楽業 | 81.3% |
サービス業 | 80.6% |
宿泊業、飲食サービス業 | 73.2% |
定着率が高い産業は、「鉱業・採石業・砂利採取業」や「金融業・保険業」となっています。また、もっとも定着率が低いのは「宿泊業・飲食サービス業」の「73.2%」ですが、コロナ禍の回復の影響もあってか入職率はもっとも高く、産業における労働人口は増加してきています。
新卒者の平均定着率
厚生労働省の調査によると、2023年時点における新卒者の3年以内定着率は、大卒で67.7%、高卒で63%となっています。新卒者に限定していない全体の平均値と比べて、離職率の割合が高いことが見て取れます。新卒者の平均定着率は長期的に見ても70%を下回ることが多く、新卒者の定着がいかに難しいかがわかります。
理由はさまざまですが、キャリアの選択肢の多様化や転職の一般化などの社会的背景も要因の一つです。新卒者の定着率向上がもっともインパクトの大きいセグメントといえるため、企業の人事戦略にとって重要な課題となるでしょう。
出典:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します
定着率を高めることの効果
ここからは、定着率を高める施策の実施や、向上による効果について見ていきましょう。
優秀な人材を確保できる
定着率を高めることで優秀な人材に長く働いてもらえるため、事業成長にポジティブな影響があります。特にマネジメント力のある人材が定着すると部下も働きやすく、部署全体の職場環境も良好になってより良いサイクルが生まれるでしょう。
また、定着率が高まれば、求職者にとっても企業が魅力的に見えます。職場の働きやすさを魅力的に伝えるのは難しいですが、定着率などの数字で表せると効果的です。結果、新規の応募やリファラル採用などが増える可能性も高まります。リファラル採用は従業員自身が組織に満足していなければ実現しないため、まずは従業員が満足して働ける環境を整えることが重要です。
採用・人材育成のコストを抑えられる
新たな人材の採用や育成にはコストがかかるため、定着率が低いと企業にとっては大きな負担となります。定着率を高めることで採用・人材育成のコストを抑えられ、資金効率も高められます。
「就職白書2020」によると、2019年度の新卒採用一人あたりの平均コストは93.6万円という結果になりました。採用の難易度上昇に伴いコストも増加傾向にあり、企業の収益を圧迫する原因になりかねません。コストを抑えて資金を有効活用することで、業績の成長や従業員の満足度向上にもつなげられます。
仕事へのモチベーションが向上する
一般的に「定着率が高い = 働きやすい環境」と考えられます。組織に対する不満が少なければ仕事へのモチベーションも向上し、チームの結束が強くなって従業員同士の理解も深まるでしょう。一方、離職する人が増加すると残っている従業員も動揺し、モチベーションが下がりやすくなるといったリスクがあります。特に、影響力の大きい部下の離職はチームの士気を左右することになるでしょう。
現状、定着率が低く不安を感じている従業員が多い企業でも、改善するための取り組みを行うことで、徐々にモチベーションを高めることができます。
生産性・顧客満足度が上がり業績が向上する
従業員の定着率が上がると仕事の熟練度が向上し、製品・サービスの品質も向上することから、結果的に業績の向上が期待できます。生産性が高まると現状の底上げをできることに加え、新たなプロジェクトの始動や職場環境を改善する取り組みなどに時間を使うことも可能です。
また、定着率が高いと従業員満足度にもよい影響を及ぼします。従業員満足度が高いと顧客満足度も高くなり、業績の改善にも寄与するでしょう。このようなポジティブなサイクルは「サービス・プロフィット・チェーン」と呼ばれます。
【関連記事】サービス・プロフィット・チェーン(SPC)とは?従業員満足度を企業の成長につなげる
定着率が高い会社の特徴とは?低くなる原因も合わせて解説
続いて、定着率が高い会社の特徴と、定着率が低くなる原因をあわせて解説します。
同業他社と比べて報酬が高い
同業他社に比べて報酬が高い企業は定着率が高い傾向にあります。転職は同じ業界内で行われることが多く、他社に比べて報酬が高いと転職する気になりづらいものです。「マイナビ転職動向調査2021年版(2020年実績)」では、転職する理由の上位に「給与が低かった」が入っています。
報酬が高い企業は財務状況も良好である可能性が高く、昇給も期待できます。他社に比べて給与が低い場合は仕事への満足感も得にくいため、転職を意識しやすくなるでしょう。
出典:マイナビ|マイナビ転職動向調査2021年版(2020年実績)
適切な人事評価制度を採用している
適切な人事評価制度のある会社では成果に見合った評価がなされるので、定着率が高くなる傾向があります。自分の仕事を適切に評価されるとモチベーションが高まり、会社への帰属意識も醸成されやすくなるでしょう。上司の一存ではなく、定量的な指標をもとにした評価制度や、業務内容に最適化された評価制度を採用している企業では、評価に納得感が生まれます。
たとえ評価が芳しくない場合も、評価基準が明確であれば改善しやすく、ポジティブに仕事に取り組めるはずです。人事評価が整備されていないと、仕事の成果以外の要素で評価されるケースもあり、モチベーションが低下して離職につながりやすくなります。
ワークライフバランスを重要視している
ワークライフバランスに配慮している企業で働く従業員は心身の健康を保ちやすく、定着率も高くなる傾向にあります。定着率の高い企業では、残業時間の適正化やメンタルケアの仕組みなど、従業員が健康的に働ける環境を用意しているところが多く見られます。
一方、ワークライフバランスに配慮していない企業では結婚や出産といったライフステージの変化に対応することが難しいため、優秀な人材が離職しやすい環境といえるでしょう。また、長時間労働や過度なプレッシャーのかかる職場環境など、長期的に勤務するのが難しい環境の会社は定着率が下がりやすいので注意が必要です。
従業員同士が良好な関係を築いている
従業員同士のコミュニケーションが活発で、良好な関係を築けている企業は定着率が高い傾向にあります。情報共有がスムーズに行われるため仕事の効率がよくなり、悩み事の相談や仕事に対する意見を言いやすいためストレスが溜まりにくいなどが要因です。日々顔を合わせるチームメンバーとの関係が良好なことは、居心地の良さにもつながります。
一方、社内でコミュニケーションが少なく雰囲気の悪い会社では、仕事上の齟齬が増えるだけでなく、疑心暗鬼になり前向きに仕事に取り組めないといったことも考えられます。また、組織への帰属意識が薄れてしまう恐れもあるでしょう。
強い企業文化を持っている
強い企業文化を持っている企業は、定着率が高くなりやすいものです。企業文化とは、従業員全員が共有する信条や価値観、行動規範のことです。企業文化が従業員に浸透すれば、同じ目標に向かって行動できるため生産性も高まります。また、行動指針の明確化やチームワークの醸成などにもつながり、定着率が高まりやすくなります。
ただし、時代に合わない企業文化を持ち続けるのはリスクになる可能性があるため、内容が重要です。強い企業文化を持たない企業は、事業の目的や価値観がまとまらないことから業務効率や推進力が向上せず、定着率に悪影響を及ぼす可能性があります。
ダイバーシティ&インクルージョンを実現している
ダイバーシティ&インクルージョンとは、個々の多様性を認めるだけでなく、多様な人材が活躍できる組織を目指すという、より発展的な考え方です。互いの違いを尊重し、活かすことで組織が活性化することを目指します。ダイバーシティ&インクルージョンを実現している企業は、個々の特性に合った業務内容や働き方を提供できるよう工夫しており、定着率が高くなりやすい傾向にあります。また、多様な人材が快適に働ける環境にすることで、心理的安全も得られるでしょう。
一方、個々の特性を見ずにトップダウンで意思決定する企業は、従業員のスキルを活かせずに定着率が下がりやすい傾向にあります。
低い定着率を放置するリスク
低い定着率を放置すると企業イメージが低下して人材が集まらず、従業員のモチベーションにも悪影響を与えます。一度悪化したイメージを回復させるには時間がかかるため、企業イメージを向上させるためにも定着率を高める工夫が必要でしょう。
また、定着率が低下するとコスト高になるうえ、人材が育たず事業成長ができなくなるのもリスクの一つです。人材の採用や教育にはコストがかかります。そのため、従業員が離職するたびに採用・教育コストがかかれば、経営にも大きく影響します。このように、経営的観点からも低い定着率を放置することはリスクとなるでしょう。
定着率を向上させる3ステップ
定着率を高めるためには、ただ調査を実施するだけでなく、振り返りなどのプロセスも欠かせません。以下では、定着率を向上させる3つのステップについて解説します。
1|現在の定着率を調査して離職理由を分析する
まずは現在の定着率を調査し、従業員の離職理由を分析しましょう。社内データを集計し、前述した計算式を用いて定着率や離職率を算出します。続いてデータをもとに、社内の人間関係や採用のミスマッチ、相対的な給与、福利厚生の水準、将来的なキャリアへの不安など、離職する理由の仮説を立てます。また、データが十分でない場合は、離職者へのアンケートや各部署へのヒアリングを行うなども必要です。
2|改善施策を実行する
離職理由を分析できたら、有効な改善施策を検討して実施します。例えば、定着率低下の要因が「社内コミュニケーション」の場合は、メンター制度の導入や1on1ミーティングの実施などを検討するのもよいでしょう。また、新入社員の定着率が低い場合は、新入社員が早く企業に馴染めるようサポートする「オンボーディング」を実施するなども一例です。部署によって課題は異なるため、各部署に適した形でプランを作り実行しましょう。
3|効果測定を行う
施策を実行したあとは定期的に振り返りを行い、定着率向上への効果を検証しましょう。効果が見られなかった場合は、新たな仮説を立てて再度、改善施策を実行します。また、定着率を計測するだけでなく、社内アンケートで従業員の満足度やエンゲージメントの計測を定期的に行い、推移を確認することも大切です。従業員満足度やエンゲージメントが高ければ、定着率も高くなる傾向にあります。
【関連記事】従業員エンゲージメントの意味・重要な理由とは?向上させる方法や事例も紹介
【関連記事】従業員満足度(ES)を上げるには?影響する要素や取り組み事例を紹介
定着率を上げるための7つの方法
続いて、定着率を上げるための具体的な方法について解説します。
1|部署に適した評価制度を導入する
評価項目は部署や仕事内容にあわせて調整が必要です。評価項目を設定する際は、自社のミッションや行動指針を反映させる、部署や職種によって項目やウエイトを調整するなどの工夫を行いましょう。評価項目を調整することで、従業員自身も業務において意識すべき点を把握しやすくなります。
また、明確な基準を設けた評価制度を採用すると、定着率によい影響があります。設定する項目は、業績に対する貢献度を評価する業績評価、業務遂行に貢献する能力を評価する能力評価、勤務態度や意欲などを評価する情意評価などが一般的です。適切な人事評価や評価を活かすリソースがない場合、人事評価研修やeラーニングの実施なども検討するとよいでしょう。
2|人材配置を最適化する
人材配置を最適化することでパフォーマンスの向上やチームの活性化につながり、定着率への効果も期待できます。個々の特性に合った配置にすると個々のスキルを活かせるため、モチベーションやエンゲージメントも高まります。人材配置は日常的に行われることもありますが、人事異動や組織体制・役職の変更、新卒採用などのタイミングで計画的に行うとよいでしょう。
配置転換は、事前に課題の抽出や目標の明確化、現状の確認・分析などを実施したうえで慎重に行います。また、従業員の意向をしっかりとヒアリングすることも大切です。すべて希望どおりとはいかないまでも、トップダウンの配置ではなく、本人の希望や将来的なキャリアプランなども確認しておくとよいでしょう。
3|人材育成やキャリアサポートを充実させる
人材育成やキャリアサポートを充実させることで、自身の成長を実感できたり長期的な展望を持てたりなど、定着率の向上に効果的です。人材育成では育成する側のスキルも重要になるため、新入社員だけでなく中堅社員や管理職の育成もあわせて行うとよいでしょう。
具体的な手法としてはOJTやOFF-JT、eラーニング、メンター制度などがあり、自社に適したものを選択します。この選択が適切でないと資源や時間を浪費し、かえって従業員のモチベーションを低下させる恐れがあるため注意が必要です。また、人材育成に関する正当な評価システムを構築することも欠かせません。
キャリアサポートでは、キャリアパス制度や社内FA制度の導入、キャリア面談の実施などが有効です。
4|ワークライフバランス実現に向けた制度を導入する
定着率向上のためには、ワークライフバランスを実現するための制度を導入することも有効です。以下は、ワークライフバランス実現に向けた取り組みの一例です。
- 残業時間の削減
- フレックスタイム制の導入
- 有給休暇取得の促進
- 育児や介護への配慮
- 育児休暇の取得サポート
- 育休復帰支援プラン
- テレワークの導入
- 福利厚生サービスの充実
- ファミリーデーの実施
- ワークライフバランスに関する経営層からの発信
ワークライフバランスの実現によって従業員が心身ともに健康に働くことができれば、労働生産性の向上にもつながります。特に、共働きが増加している時代においては、育児や介護と両立して働ける環境や、育休から復帰しやすい環境づくりが重要です。
5|社内のコミュニケーションを活性化させる制度を導入する
社内のコミュニケーションを活性化させることで生産性やモチベーションが向上し、定着率向上にもつながります。以下は、社内コミュニケーションを活性化させる具体的な取り組みです。
- フリーアドレス制:従業員の席を固定せず、好きな席で仕事ができる制度。部署や役職の垣根を超え、さまざま人と接する機会が増える
- リフレッシュスペースの確保:飲食をしながら、リラックスした状態で自然と会話ができる。なかにはアルコールを飲めるスペースを設けている企業もある
- ミーティングスペースの確保:会議はもちろん、気軽なミーティングにも活用できるスペースがあれば、従業員同士のコミュニケーション活性化に役立つ
- コミュニケーションツールの導入:在宅勤務や複数拠点などで離れている従業員のコミュニケーションに有効。チャットツールや社内SNSなど
- 社内イベントの実施:従業員同士の親睦を深め、モチベーションを高めるよい機会となる
- 社内サークル活動の実施:同じ趣味を持つ従業員が集まって行う活動。部署や役職の垣根を越え、普段交流できない人ともコミュニケーションを図れる
社内で良好な人間関係が構築できれば、従業員満足度の向上にもつながります。
6|給与水準や福利厚生を充実させる
給与水準や福利厚生を充実させることは定着率の向上につながります。他社の給与水準や福利厚生の内容を調査して自社の内容を見直し、相対的に評価・改善を行いましょう。特に、給与のベースアップやインセンティブ導入などは効果的です。優秀な人材の定着率を上げたい場合は平等感のあるものでなく、適切な評価にもとづいて成果に見合った報酬を用意する必要があります。
また、福利厚生では、住宅手当や健康に関する費用負担、資格取得支援など、経済面でメリットのあるものを検討しましょう。どのような制度が必要か、従業員にヒアリングしてみるのもおすすめです。
7|従業員の満足度・エンゲージメントを調査する
従業員の満足度・エンゲージメントを定期的に調査することで、現状の把握や施策の効果を確認でき、定着率の向上に役立ちます。従業員満足度とは、職場環境や労働条件、人間関係などに対する満足を示す指標です。一方の従業員エンゲージメントとは、従業員がどれくらい組織に貢献したいか、愛着があるかなどを測る指標のことです。定着率への影響度は、エンゲージメントのほうが大きいと考えてよいでしょう。調査によって現状の課題を可視化することで、適切な施策を実施できます。
調査は社内アンケートによって、従業員の本音を引き出す方法が一般的です。アンケート結果を分析することにより組織の課題が明確になり、改善策を検討することができます。また、適切な社内アンケートは専門知識が必要なので、専用のツールや専門家のサポートを受けることも有効です。
従業員エンゲージメントを調査する場合は、指標としてeNPS℠を活用するとよいでしょう。eNPS℠とは、従業員エンゲージメントを数値化した指標のことです。「友人や家族にあなたの職場をどれくらいすすめたいですか?」という質問により「職場の推奨度」を測ることができます。
【関連記事】事業成長に寄与するeNPS℠とは?調査方法や向上させる方法を解説
定着率の向上に成功した企業の事例
ここでは、定着率の向上に成功した企業の事例を3つ紹介します。
株式会社サンユー
首都圏にて約90事業所の給食施設を運営している株式会社サンユー。同社では新卒定期採用を実施していたものの、新入社員の早期退職が発生したことから、新入社員を対象とした教育体系を整備しました。具体的には、新入社員研修や月1回の集合研修の見直し、主任からのフィードバックが得られる業務日報の導入などです。研修に関しては受講して終わりではなく、その後に自己評価演習も実施し、次年以降の取り組み課題につなげています。
施策実施後は、従業員の意識や行動に変化が見られました。研修の場が情報交換としての機能を果たし、業務日報は新入社員の配置転換などにも役立っているようです。また、必要に応じて面談を実施したことで、早期退職の原因把握が可能になりました。
サイボウズ株式会社
ソフトウェア開発を行うサイボウズ株式会社では、2005年に離職率が28%と過去最高を記録しました。それを機に組織や評価制度を見直し、社内コミュニケーションを活性化する施策やワークライフバランスに配慮した制度などを取り入れた結果、現在の離職率は3~5%程度にまで下がっています。
2018年に開始した「働き方宣言制度」は、ライフステージの変化に合わせて働き方を選択できる制度です。個人の事情に合わせて、働く場所や時間を自由に選ぶことができます。また、「働き方宣言制度」で宣言した内容と異なる働き方が単発でできる「ウルトラワーク制度」も開始しています。ほかにも、結婚休暇や忌引休暇、介護・育児のための短時間勤務制度なども利用可能です。
さらに、社内で感謝の投票を行うサイボウズオブイヤー、部活動など、従業員のチーム力を高められる活動も積極的に支援しています。
株式会社 物語コーポレーション
外食・レストランなどのフードサービスを展開する株式会社物語コーポレーションは、社員の満足度が高いことで知られています。2022~2023年にかけての離職率は15.3%と、飲食サービス業の離職率である26.8%より低い数値を誇っています。また、従業員が意見や提案を言いやすい環境が整っており、社員満足度が高いのも特徴です。特に、「相互尊重」や「成長環境」などの項目が支持されています。
また、7連休が取得できる「レインボー休暇」は、2022~2023年にかけての取得率が97.9%と非常に高い数値を出しています。ほかにも、従業員の声を拾い上げる「なんでも提案実行委員会」、優れた店舗や人材を表彰する「ファミリーコンベンション」なども実施し、従業員の士気を高めています。
定着率の向上に寄与するNTTコム オンラインのリサーチサービス
「ES-Quick」は、ES(従業員満足度)調査を簡単・手軽に実施できるツールです。調査実施に必要な調査設計・アンケート運用支援・分析・レポートをパッケージ化して提供しています。従業員満足度に加え、eNPS℠をもとにしたレポートを作成することも可能です。Webアンケートは選択式のため、調査に不可欠な基本設問をあらかじめ網羅しており設計の手間もかかりません。
また、アウトプットはグラフ化されて可視化でき、迅速に改善点に対するアクションを取ることができます。属性別の分析やポートフォリオ分析、フリーアンサーデータなどを活用し、効率的かつ高精度な分析が可能です。さらに詳しく調査をしたい企業様向けに、「eNPS℠ベンチマーク調査」や「eNPS℠調査分析・コンサルティング」などのサービスも提供しています。
導入事例:製造業
ES-Quickを導入以前、製造業様には以下のような課題がありました。
- 従業員の社員像を掴むためにアンケート調査を検討したいが、効果的なアンケート結果が集まらない
- 社員の離職率を下げるため、どのような不満点が離職につながっているのかを把握したい
ES-Quickを導入後、以下のような効果を実感されています
- 個人の意識が変わり、チーム単位での業績も向上した
- 優先的に改善すべき点が把握でき改善できたことで、従業員一人ひとりに意欲的な取り組み意識が生まれた
- 定期的なアンケート調査実施により業務改善のPDCAが確立し、離職率の低下と業績向上につながった
定着率の向上は事業成長につながる重要な指標
定着率が向上することで従業員のモチベーションが高まり、生産性や顧客満足度の向上にもつながります。結果的に業績の向上も期待できるため、定着率向上は企業が取り組むべき大切な施策の一つといえます。ただし、ES調査には時間や手間がかかるため、施策を効率的に実施するためにはツールの導入がおすすめです。
煩雑なES調査を手軽に実施できるツール「ES-Quick」を導入することで、調査結果を可視化し、課題をスムーズに改善できます。ぜひ、従業員が満足できる環境づくりへの取り組みにお役立てください。
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