2023/11/24
顧客満足度とNPS®
リテンション施策とは?マーケティングや人事に効果的な施策を解説
近年、耳にすることが多い「リテンション(Retention)」という言葉には「保持」「維持」などの意味があります。リテンションはマーケティングや人事領域で使われることが多く、それぞれの領域では意味が異なります。
この記事では、マーケティング・人事それぞれにおけるリテンションの意味や重要とされる理由、効果などを解説します。あわせて施策事例も紹介するので、リテンション施策を検討中のマーケティング・人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
- マーケティングにおけるリテンション=「既存顧客との良好な関係を維持するための施策」
- 人事におけるリテンション=「自社に必要な人材を維持するための施策」
- リテンションでは現状を把握し適切な施策を実施することが重要
- リテンション施策には行動分析ツールや調査ツールなどの使用がおすすめ
マーケティング・人事の施策において重要なリテンションとは?
「リテンション」は主にマーケティングと人事で使われる用語で、それぞれの領域において意味合いが異なります。ここではマーケティング・人事におけるリテンションをそれぞれ解説します。
マーケティングでのリテンション
マーケティングでのリテンションは、既存顧客との良好な関係を維持するための施策を指します。新規顧客を獲得するためには既存顧客の5倍のコストがかかるという「1:5の法則」からもわかるように、企業にとって既存顧客を維持することは非常に重要です。
そのため、リテンション施策によって既存顧客の満足度を高めることができれば、コストを抑えて収益を確保することができます。顧客ロイヤルティを高めることで継続的な商品・サービスの利用に期待でき、ロイヤルカスタマーの醸成にもつながるでしょう。
【関連記事】
顧客ロイヤルティ(顧客ロイヤリティ)とは?向上させるメリットと事例
マーケティングのリテンション施策が重要な理由
昨今、消費者の価値観や購買行動の多様化、ライバル企業の増加などにより、価格や性能だけで差別化することが難しくなってきました。消費者は商品やサービスそのものだけでなく、企業の理念や開発ストーリーなどにも共感して購入を決めるケースが増えています。
また、企業の多角経営やグローバル化に伴い競争が激しくなり、類似した商品やサービスが多く出回るなか、顧客満足度につながる付加価値が重要となっています。企業は顧客に自社の商品・サービスのファンになってもらい、長期的な関係を築くことが事業成長において重要だといえるでしょう。
マーケティングのリテンション施策の効果
マーケティングのリテンション施策には、ロイヤルカスタマーの育成や休眠顧客の掘り起こしなどの効果が期待できます。顧客のニーズをもとに施策を打つことで、自社により多くのお金を費やしてくれる優良顧客を増やすことが可能です。また、優良顧客にさらなる特別な体験を提供することで、自社に愛着を持つロイヤルカスタマーを育成することにも繋がります。
さらに、リテンションマーケティングでは休眠顧客にも粘り強くアプローチし、再び自社への関心を持ってもらうきっかけを作ることができます。リテンション施策により、顧客離れを5%改善できれば25%以上の収益が見込めるといった「5:25の法則」も実現しやすくなるでしょう。
【関連記事】
ロイヤルカスタマーは重要な戦略ターゲット。増やす方法は?
人事におけるリテンション
人事でのリテンション施策は、自社に必要な人材を維持するための施策を指します。優秀な人材の流出防止や従業員に長く活躍してもらうための施策などは「リテンション戦略」や「リテンションマネジメント」などとも呼ばれます。
企業の運営における人的資源は、経営資金や自社製品と並ぶ重要な要素。優秀な人材は良質な製品の開発や売上の向上に必須です。
【関連記事】
従業員満足度(ES)を上げるには?影響する要素や取り組み事例を紹介
従業員エンゲージメントの意味・重要な理由とは?向上させる方法や事例も紹介
人事のリテンション施策が重要な理由
近年、多くの業界で人材不足が深刻な問題となっています。少子高齢化による労働人口の減少なども要因の一つです。また、終身雇用の概念が弱まることで若年層の早期退職も増えるなど、人材の流動化も活発になっています。離職率が高ければ人が育たず、社内にノウハウも蓄積しません。さらに、退職した社員との結びつきが強い顧客が離れていく可能性もあるでしょう。
マイナビの調査では、1人あたり「約45万円」の採用コストがかかっていることがわかっています。このように、優秀な人材の流出を防ぐ目的や採用コストにおいてもリテンション施策は大変重要です。
人事のリテンション施策の効果
人事のリテンション施策により従業員満足度を高め、離職率を低下させることが可能です。その結果、採用コストを削減できるのも効果の一つといえます。人材を採用する際にはさまざまなコストがかかりますが、従業員の離職を防ぐことでコストを抑えることができるのです。
また、従業員が退職すると自社で身につけたスキルやノウハウが社外へ流出してしまうという危険性もあります。離職を防ぐことでスキルやノウハウの蓄積に加え、それらを社内で共有することで企業全体のスキル・ノウハウの蓄積につなげられるでしょう。
さらに、リテンション施策は従業員のモチベーションアップにもつながり、職場の活性化や生産性の向上も期待できます。
【関連記事】
サービス・プロフィット・チェーン(SPC)とは?従業員満足度を企業の成長につなげる
マーケティングのリテンションで効果的な施策
マーケティングにおけるリテンションでは以下のような施策が効果的です。
SNSマーケティング |
X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSを活用してリテンションを図る 不特定多数にリーチでき、拡散力が高いのが特徴
|
---|---|
メールマーケティング |
メール配信を活用して既存顧客にリテンションを図る
|
カスタマーサポート |
問題を抱えている顧客に対し迅速・丁寧に対応し、顧客ロイヤルティを高める
|
カスタマーサクセス |
顧客へ能動的に働きかけ、顧客の目的達成や事業成長をサポートする
顧客の成功体験により信頼感を得られ、ファン化の促進やリテンション率向上を実現できる |
ほかにオフラインマーケティングやレコメンド、データ分析ツール導入などの方法もあり、自社の商品やサービスの特性に合うものを選択することが重要です。
人事のリテンションで効果的な施策
人事におけるリテンションでは以下のような施策が見られます。効果的に実施するためには、金銭的な報酬と働きやすさやモチベーションアップにつながる非金銭的報酬のそれぞれが必要です。
社内のコミュニケーション活性化 |
離職の原因になりやすい職場での不満の声に耳を傾け、従業員同士がコミュニケーションを図れる機会を作る
|
---|---|
適切な評価制度の策定 |
適切な評価制度の導入により、従業員の企業に対する信頼感を高める
|
教育制度や能力開発の強化 |
従業員が成長できる環境を整えモチベーションアップを図る
|
福利厚生の整備 |
従業員が望む福利厚生によりモチベーションをアップさせる
|
マーケティングのリテンション施策事例
ここからは、マーケティングのリテンション施策の事例を紹介します。
Amazon
世界的ECサイトの「Amazon」は、アメリカの顧客の88%がGoogleなどの検索エンジンを使用せず、直接Amazonにアクセスして商品を探すといった根強いファンを獲得しています。その要因として、顧客の閲覧履歴に基づいたリテンションメールの送付や、カスタマーサービスのフォローなどが挙げられます。
商品購入に関するトラブルが発生した際にも、長時間待たされることなくすぐに電話やチャットで対応しており、素早いレスポンスが顧客からの信頼に繋がっています。顔が見えないECサイトだからこそ、このような迅速な対応が多くのファンを生み出す要因となるのでしょう。
日本マクドナルド株式会社
世界有数のファストフードチェーン「日本マクドナルド株式会社」は、SNSを効果的に活用したリテンション施策を実施しています。同社のXのフォロワー数は600万人以上(2023年10月時点)。Xでは1日10件前後のペースで新商品の紹介やキャンペーンの告知などを行なっています。
多くのリツイートを獲得しており、同社の情報に敏感なファンが多いことが窺えます。また、SNSから公式サイトへ効果的に誘導してアプリのダウンロードへつなげるなど、SNSを広告や顧客との関係性構築などにうまく活用している例です。
人事のリテンション施策事例
続いて、人事のリテンション施策事例を紹介します。
カネテツデリカフーズ株式会社
主に水産練製品の製造・販売を行う「カネテツデリカフーズ株式会社」は、リテンション施策として新入社員と若手リーダー育成に向けての指導員制度を導入しました。新入社員配属後約半年間は若手社員が指導員としてマンツーマンで指導にあたります。両者が話し合って目標を決定し、月末に指導員と所属長がフィードバックを実施するという流れです。
また、コミュニケーション研修などのフォローアップ研修も随時行なっています。本制度導入後、入社3年以内の離職率が約50%から約10%へ減少しました。同社は引き続き働き方改革を進め、社員がより働きやすい環境づくりを目指したいとしています。
株式会社ラヴィアンローズ
エステティック業をはじめ、介護事業や中食事業なども幅広く展開している「株式会社ラヴィアンローズ」。同社は「充実とゆとり」をテーマに、社員の働く環境を整える施策に注力しています。具体的には、新入社員1人に先輩社員1人が付き、配属後半年にわたり公私ともにフォローを行う「シスター制度」を導入。
ほかにも、年次有給休暇計画的付与制度や定期面談制度、ベースアップ、休憩時間管理見直しなどを実施し、社員の定着を図っています。シスター制度の導入により、かつての入社1年以内の離職率は30%以上でしたが、16%程度に改善しています。社内コミュニケーションも活発になり、社員の仕事への取り組み姿勢も主体的になったとのことです。
リテンション施策はデータによる現状把握と改善がカギとなる
マーケティング、人事どちらのリテンションにおいても、まずは現状を把握して適切な施策を実施することが大切です。施策では顧客データや社内データの収集、アンケート調査など、定性的・定量的なデータを集めて分析しましょう。
データの収集・分析の仕方を誤ると適切な結果が得られないので、行動分析ツールやNPS・eNPSなどの調査ツールを活用することが重要です。
NPS・eNPSとは?
「NPS(Net Promoter Score)」とは、顧客ロイヤルティを測るための指標です。顧客に対する「あなたはこの商品やサービスを知り合いにどの程度すすめたいですか」という質問から顧客ロイヤルティを数値化します。
一方の「eNPS(Employee Net Promoter Score)」とは、従業員エンゲージメントを測るための指標です。従業員がどれくらい自社に対する信頼感や愛着を持っているかを測定でき、従業員のモチベーションアップに繋がる施策の立案に活用できます。
どちらも数値の向上が顧客ロイヤルティの向上や企業の売上増加につながります。NPS・eNPSともに世界中で広く採用されているので、ベンチマークとしても活用できるでしょう。
効果的なリテンション施策の策定に貢献するNPSツール
ここでは、NPSの調査・分析をサポートする「NPX Pro」、eNPSの調査をサポートする「eNPSリサーチ」を紹介します。
NPX Pro
「NPS Pro」はCX向上を支援するNPSツールです。顧客のフィードバックを分析し改善アクションの促進を行うことで、顧客ロイヤルティを向上させ企業の成長につなげることができます。以下は、NPS Proの主な機能です。
- NPSアンケート作成、配信
- NPSアンケート集計、分析
- NPSアンケート分析結果の共有
- 改善アクションの促進・管理
NPS調査の設問設計から配信・回収をはじめ、分析や社内での情報共有、改善アクションの提案なども行えます。コメントのネガポジを通知するアラート機能や、担当者のアクション履歴・進捗が管理できる点も特徴です。また、メールやSMSでのアンケート配信といった回答率の高いリサーチも行え、カスタマージャーニー・ショートタームジャーニーに合わせたアンケート作成、複数の調査の一括管理も行えます。
導入事例|NTTタウンページ株式会社 様
近年、デジタルマーケティング事業に注力し、2021年にNPX Proを導入された「NTTタウンページ株式会社」様。当初は社内でオリジナルのアンケートフォームを作成しお客様にメールで案内していましたが、送付作業や集計作業に時間がかかり、手が回らなくなったことからツールの導入に踏み切られました。
導入後は顧客接触回数が月110回から2100回へと増大し、ホームページを起点に顧客獲得支援サービス「デジタルリード」のNPS調査にもツールを活用。2022年度下期には解約率が4%ほど低下するなど、目に見えて効果を実感しているといいます。使用感としてはダッシュボードが快適なうえ、配信や集計がとてもスピーディーにできるようになったとの声が届いています。
eNPSリサーチ
「eNPS調査」貴社の従業員に対するeNPS調査により、貴社にお勤めの従業員のエンゲージメントの度合いの現状とその要因を把握できます。
リテンション施策は長期的な事業成長に寄与する
マーケティングや人事におけるリテンション施策は、いまや企業にとって必要不可欠といえます。既存顧客と良好な関係を築いて継続的な商品・サービスの購買につなげる、従業員エンゲージメントを向上させて優秀な人材の流出を防ぐなどが実現でき、長期的な事業成長に繋がります。施策を効果的に実施するためにはツールの導入などを検討することもおすすめです。
本記事で紹介した「NPX Pro」や「eNPSリサーチ」なども活用し、顧客や従業員が満足できる最適なリテンション施策を実施しましょう。以下のNPSやNTTコム リサーチに関する資料もダウンロードし、ぜひご活用ください。
【
顧客満足度とNPS®
】
最新のコラム
2024/09/17
2024/09/17
2024/01/15
2023/11/24