2024/03/22

NPS®(ネットプロモータースコア)入門・導入編

顧客体験マネジメント(CXM)とは?CRMとの違いや成功のポイント、企業事例を紹介

昨今、似たような商品が市場に出回り競争が激しくなるなど、商品自体の価値による差別化が難しくなっています。さらに消費者のニーズの多様化も見られるなか、顧客の体験を向上させることを目的とする「顧客体験マネジメント(CXM)」に注目する企業が増えています。

本記事では顧客体験マネジメント(CXM)の概要や取り組むメリット、成功のポイントについて解説します。また、あわせて顧客体験マネジメント(CXM)を実施している企業の施策事例も紹介するので、顧客体験マネジメント(CXM)への理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。

この記事の内容
  • 顧客体験マネジメント(CXM)とは顧客体験の管理や改善を行い、顧客体験(CX)を最大化するための手法
  • 顧客体験マネジメント(CXM)により、ロイヤルカスタマーを創出できる、他社との差別化が図れる、などのメリットがある
  • 顧客体験マネジメント(CXM)を成功させるためには、顧客への理解を深める、継続的な効果測定を行う、ドライバー分析により影響が多いポイントを可視化する、などが必要

顧客体験マネジメント(CXM)とは?

まず、顧客体験マネジメント(CXM)の概要やその重要性、また顧客満足度(CS)や顧客関係管理(CRM)との違いについて解説します。

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顧客体験マネジメント(CXM)とは「顧客体験の管理や改善」

「顧客体験マネジメント(CXM)」とは、顧客体験の管理や改善を行い、顧客体験(CX)を最大化するための手法のことを指します。CXMは「Customer Experience Management(カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント)」の略です。

商品やサービスの価格やスペックなどだけでなく、その商品・サービスにより得られる満足感や感動、心地よさなどを向上させることは、顧客ロイヤルティを醸成し収益向上へとつながります。具体的な目的は、顧客との関係性の強化やブランド構築などが挙げられます。

多様な選択肢がある現在、自社のサービスを選んでもらうためには商品・サービスとの接点に感動や心地よさを感じてもらうことが重要です。

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顧客体験マネジメント(CXM)の重要性が高まっている背景

昨今、市場成長の鈍化や選択肢の多様化により、リピーターの重要性が高まっています。これまでのように1つの商品を購入したら終わり、ではなく、いかに継続して購入してもらえるかがカギとなります。顧客に長く愛される仕組みづくりが必要になるでしょう。

また、顧客との接点が多様化したことで、顧客体験を包括的にマネジメントする必要が出てきました。インターネットやSNSなどの進化により、顧客自身が情報発信を行うようになり、ポジティブ・ネガティブどちらの発信も拡散されるようになりました。そのため、顧客の要望やクレームを拾い上げ、管理・分析する必要が生まれてきたのです。

顧客体験マネジメント(CXM)は自社商品やサービスを選んでもらえるためのきっかけとなり、自社の強みを活かしたりリスクを回避したりすることができます。

顧客満足度(CS)との違い

「顧客満足度(CS)」とは、顧客が自社の商品やサービスに対し、どれくらい満足しているかを測る指標です。顧客満足度(CS)が向上すればリピーターが増える可能性も高まり、売上向上にもつながります。顧客満足度(CS)調査の結果をKPIとする企業は多いものの、顧客満足度(CS)はあくまで個別の顧客体験にフォーカスを当てたものです。そのため、収益性との関係は曖昧でした。

一方の顧客体験マネジメント(CXM)は、顧客と企業との接点における体験全体を俯瞰的にマネジメントします。また、顧客の感情と行動結果を結びつけて管理できる点も特徴です。

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顧客関係管理(CRM)との違い

「顧客関係管理(CRM)」とは、顧客情報を一元管理することによって顧客との関係性を向上させること、またその目的のために使用するツールを指します。顧客関係管理(CRM)はテクノロジーの進化により顧客の多様な情報を収集・管理し、よりよい関係を築くために活用されています。

顧客関係管理(CRM)は顧客との接点におけるアクションや取引実績などの事実に焦点を当てている一方、顧客体験マネジメント(CXM)は、顧客が体験を通して得られる感情に焦点を当てているのが特徴です。

顧客関係管理(CRM)はデータドリブンによるマーケティングの効率化やパーソナライズを実現しましたが、顧客の感情を踏まえた意思決定をするのは難しいと考えられます。

顧客体験マネジメント(CXM)に取り組むメリット

顧客体験マネジメント(CXM)に取り組むことで、多様なメリットがあります。具体的には、ロイヤルカスタマーを創出でき、長期的かつ安定した売上が望めることです。ロイヤルカスタマーが増えればポジティブな口コミも拡散されやすく、多くの人に自社商品やサービスを認知してもらえます。さらに、ロイヤルカスタマーに関するデータ量も増えるため、マーケティングの効率も高まるでしょう。

また、顧客体験マネジメント(CXM)によって他社との差別化を図れることもメリットの1つです。選択肢が多い現代では商品やサービスそのもので差別化を図ることは難しく、いかに顧客体験に価値を見出してもらえるかが重要になります。さらに、差別化を図ることで価格競争も回避できます。

【関連記事】ロイヤルカスタマーは重要な戦略ターゲット。増やす方法は?

顧客体験マネジメント(CXM)を成功させる5つのポイント

ここからは、顧客体験マネジメント(CXM)を成功させるポイントを5つ紹介します。

1|適切なゴール設定を行う

顧客体験マネジメント(CXM)を成功させるためには、はじめに適切なゴール設定を行う必要があります。顧客体験マネジメント(CXM)によってなにを実現したいのかを明確にし、目標達成の度合いを測るための指標であるKGI・KPIを設定しましょう。長期的な指標ではLTV(顧客生涯価値)、短期的な指標ではリピート率や顧客ロイヤルティを指標化したNPS®などが用いられます。

2|顧客を深く理解する

顧客体験マネジメント(CXM)は顧客の感情を起点に施策を行うため、顧客を深く理解する必要があります。購買履歴や顧客行動などの定量的なデータだけでなく、口コミなどの定性的なデータも収集し、施策に活かさなければなりません。顧客がどのようなことに価値を感じ、どのようなことに感動したのかを分析し、理解を深めます。

現在は定性的なデータを定量化するツールなどもあります。定量化することでデータを誤って解釈することを防ぎ、施策の精度を高められます。最終的には各タッチポイントのデータを分析後に、カスタマージャーニーマップを作成することをおすすめします。

【関連記事】CX計測に役立つ9つの指標を解説|改善の手順も紹介

3|ターゲットとなる顧客セグメントを洗い出す

どのセグメントに向けて顧客体験マネジメント(CXM)を行うかも重要です。もっとも効果的なセグメントを割り出し、そこに注力することで効果を最大化できます。生活スタイルの違いや、新規購入者かリピーターかなどによっても、価値観や求めているものは異なります。

年代や性別などの顧客データや、よく閲覧するWebページ、好みなどの行動パターンなどを抽出・加工し、自社の強みを訴求できるセグメントを明確にしましょう。ターゲットとなる顧客セグメントを洗い出すことは、どのようなマーケティングにおいても必要です。

4|継続的な効果測定を行う

顧客体験マネジメント(CXM)は、継続的な効果測定と改善により最適化していくことが大切です。顧客体験は多岐にわたるうえ、時流によって変化していくものです。継続的な効果測定により変化をいち早く察知し、柔軟に対応していくことで質の高い顧客体験マネジメント(CXM)を実現できます。

また、効果測定を通して各タッチポイントの現状だけでなく、それぞれが与える影響についても確認していきましょう。効果測定の方法としては、指標としての信頼度が高いNPS®を活用することをおすすめします。

NPS®とは?

「NPS®(Net Promoter Score)」とは、顧客ロイヤルティを測る指標を指します。顧客アンケートで「商品やサービスを家族や友人にどれくらいおすすめしますか」という質問を行い、0~10の11段階で回答を得ます。スコアにより回答者を以下の3つに分類し、計算式によって値を算出します。

  • 0~6「批判者」
  • 7~8「中立者」
  • 9~10「推奨者」

NPS®=「推奨者の割合」-「批判者の割合」

NPS®は企業の収益と相関性があることがわかっており、ベンチマークとして活用できます。NPS®を実施する際には、設問の数や内容を工夫する、結果を分析して改善につなげる、社内で共有を行うなどがポイントです。

5|影響度が大きいポイントを可視化する

顧客体験マネジメント(CXM)は顧客体験全体をマネジメントすることですが、特に重要なポイントに注力して効果を高めることも大切です。具体的には、顧客が重要視しているにもかかわらず、現状のロイヤルティが低いポイントに注力することを指します。ポイントを洗い出すにはNPS®調査を用いるのが有効です。

NPS®調査における顧客の評価を、アクションドライバーチャートを用いたドライバー分析で可視化することで、優先度の高いポイントを明確にできます。ドライバー分析とは、4象限の表を用いて、NPS®向上に影響を与える要因を導き出すための手法です。

優先改善項目 重要維持項目
注意観察項目 基本維持項目

各項目は以下を意味しています。

  • 重要維持項目(強み)
    顧客満足度を得やすく、かつ推奨度への影響が多い項目。重点的に維持していく必要がある
  • 優先改善項目(弱み)
    推奨度は大きいにもかかわらず、顧客の満足度が低い項目。表の左上に位置するほどもっとも優先的に対応が必要となる
  • 基本維持項目(基本価値)
    顧客の満足度は高いものの、推奨度への影響は高くない項目
  • 観察・注意項目
    顧客の満足度、推奨度への影響がともに低い項目。時勢や施策によってもポジションが変化する可能性があるので、継続的に観察が必要

ドライバー分析を行うことで優先度が明確になり、効率よく課題を改善していくことができます。

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顧客体験マネジメント(CXM)の企業事例

ここでは、顧客体験マネジメント(CXM)を実施している企業の施策事例を紹介します。

スターバックス コーヒー ジャパン

スターバックスコーヒー ジャパンが2019年からスタートした「Mobile Order & Pay(以下、モバイルオーダー)」は、顧客体験マネジメント(CXM)の一例です。店舗で注文する際のペインポイントとなる「列に並ぶ時間」を解消するためにスタートした施策で、アプリ画面であらかじめ商品やカスタマイズ内容などを選択し、受け取り時間に店舗に向かえば待たずに商品を受け取れるというサービスです。一度利用すると利用頻度が増える傾向にあるといいます。

また、「お客様を番号で識別するのは良くない」といった考えから、オーダー時に最大10文字の「ニックネーム」を指定できる取り組みも実施しています。ニックネームにより特別感を得られるうえ、スタッフとお客様との会話のきっかけにもなっています。便利なことはもちろん、利用して楽しいと感じてもらえるなど、同社は「豊かな体験」を提供することに注力しています。

東京ガス株式会社

東京ガス株式会社は、自社のWeb会員サービス「myTOKYOGAS」を利用するお客様が困りごとを抱えない状態を理想と考え、顧客体験マネジメント(CXM)を向上すべくシステムを導入しました。導入後は、これまでサイト上のFAQやチャットボットではうまく対応できなかったお客様に能動的に解決方法を提示し、必要に応じて問い合わせ窓口を案内するなど、より細かいサポートができるようになったといいます。

システムを利用することで、お客様がつまずく理由や困ったときにどのように行動しているのかが可視化され、具体的な改善ポイントが明確になりました。また、以前は分析に時間がかかっていましたが、システム導入後はリリースまでのスピードが速くなり、より精度の高い施策を打てるようになったとのことです。

顧客体験マネジメント(CXM)の効果測定に有効な「NPX Pro」

「NPX Pro」はCX向上を支援するNPS®ツールです。顧客のフィードバックを分析し、改善アクションまでの促進をスムーズに実現できます。NPX Proの主な機能は以下のとおりです。

  • NPS®アンケート作成、配信
  • NPS®アンケート集計、分析
  • NPS®アンケート分析結果の共有
  • 改善アクションの促進・管理

NPX Proではアクションドライバー分析により、優先改善課題の把握が容易に行えます。また、カスタマージャーニーを見える可し、タッチポイントごとの調査や複数のタッチポイントをまたぐショートタームジャーニー調査を行うことも可能です。さらにフォローアップアクションの実施履歴や進捗状況を管理できるなど、顧客体験の向上をしっかりとサポートして、顧客ロイヤルティを高める効果が期待できます。

導入事例|株式会社 ジャルパック 様

日本航空を利用した旅行商品の企画運営・販売・管理を行なっている株式会社ジャルパック様。同社は以前、独自の顧客満足度アンケートで結果が常に90%を超えている状態でしたが、さらなる顧客満足を目指し、現在は「海外旅行事業」「国内旅行事業」「訪日事業」の3事業にNPX Proを導入されています。

導入の決め手となったのはシステムの使いやすさに加え、分析結果の可視化に優れていることや支援体制などでした。導入後は自社の強み・弱みが明確になり、改善点の優先順位をつけられるようになったといいます。現在は毎月2回、NPS®やNPX Proについての社内講習会を実施し、理解を深められています。

顧客体験マネジメント(CXM)により顧客と強固な関係を築こう

顧客体験マネジメント(CXM)を向上させることにより、ロイヤルカスタマーを創出できるなど、顧客との関係を構築することが可能です。顧客に自社商品やサービスの価値を見出してもらえれば良い口コミを拡散してもらえ、新たな顧客の獲得にもつながります。ドライバー分析を用いたNPS®調査を実施するなどして自社の強み・弱みを可視化し、改善点には迅速に対応しましょう。

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