ROAS(Return on Advertising Spend)とは、かけた広告費に対する売上を%で表したもので、広告費の
回収率ともいいます。ウェブ広告の効果測定指標として欠かせないROASについて解説します。
ROAS(ロアス)とは、Return On Advertising Spendの略語で、日本語では「広告の費用対効果」という意味です。広告費に対してどれだけの売上が得られたかを計算する指標で、広告の効果を把握する上で重要な指標です。
近年、ROASが重要視されている理由は、ネット広告を中心にさまざまな広告手法が混在するようになり、それぞれの広告の効果を比較したいというニーズが高まったからです。Aという媒体に広告を出したほうがいいのか、Bという広告ネットワークに広告を出したほうがいいのか、ROASを算出することでどちらの広告が効果的なのかがわかりやすくなります。
ROASの計算式は、「広告からの売上÷広告費×100(%)」です。広告からの売上が150万円で、広告費が100万円の場合、150万÷100万×100%でROASは150%となります。
ROASを計算するためには、かけた広告費だけでなく、「その広告から得られた売上」を正確に把握する必要があります。テレビCMや屋外広告、交通広告で「その広告から得られた売上」を正確に把握することは困難ですが、ネット広告であれば「その売上がどの広告を契機としたものか」を比較的簡単にたどることができます。
ROASと似た指標に、ROIがあります。ROIはReturn On Investmentの略語で、日本語では「投資に対する利益」という意味です。ROIは「利益÷投資額×100(%)」という式で計算できます。ROASの分子は「売上」ですが、ROIの分子は「利益」です。つまり、ROIの計算結果がプラスなら利益が発生している/マイナスなら損失が生じているということがわかります。ただしROIは割合を算出する公式なので、「どれだけ利益が生まれているか」を算出することはできません。
ROIは利益、ROASは売上から計算する指標なので、ROASだけでは、「その広告が利益を生んでいるか」はわかりません。売上が計上されていても、利益が生まれていないというケースも考えられるので、広告全体の効果を計測する指標としてはROASよりROIが用いられる傾向があります。ただし、広告同士の比較では、計算が単純なROASが便利な場合もあります。
CPAは、Cost Per Acquisitionの略語で、日本語では「コンバージョン1件当たりの獲得単価」という意味です。計算方法は「広告費用÷コンバージョン数」です。CPAが高くなるほど、コンバージョンを1件獲得するために広告費用が必要になるので、CPAは低いほうが広告効果が高くなります。ちなみにコンバージョンとは転換という意味で、何をコンバージョンとするかはサイトの目的や事業内容によって異なります。ECサイトであれば購入を、コミュニティサイトでは会員登録を、企業サイトでは問い合わせをコンバージョンとして扱うことが一般的です。BtoBサイトでは「潜在顧客から見込み顧客へ転換した」「資料をダウンロードした」「問い合わせを行った」など、複数のアクションをコンバージョンとして計測する例が多くなっています。
ROAS、ROI、CPAはどれも広告の費用対効果を計測する指標ですが、把握できる内容がそれぞれ異なります。ROASは売上、ROIは利益、CPAはコンバージョンをベースにした指標です。どの広告が効率的か判断するのか、広告施策全体を評価するのか、売上や利益ではなくコンバージョンを単位にするのかで採用するべき指標は異なります。それぞれの特性を理解して使い分けるようにしましょう。
ROASをKPI(Key Perfomance Indicator)として用いる場合、目標を設定する必要があります。ROASを目標にする場合、損益分岐点となるROASを把握することが重要です。損益分岐点となるROASは、「顧客単価÷(顧客単価-原価)×100(%)」という計算式で算出できます。たとえば顧客単価が100万円、原価が35万円だとすると、損益分岐点となるROASは、100万÷(100万-35万)×100(%)=153.8%となります。ROASが100%以上なら、広告費以上の売上があるということになりますが、損益分岐点となるROASを把握しておくと、どの程度まで売上があったらいいのかを算出しやすくなります。
ROASのメリットは、売上と広告費が紐付けば算出できるので計算しやすく、広告同士の費用対効果を比較するのに適している点です。AというSNS広告のROASが210%、BというWebメディアへの広告のROASが250%だった場合、Bのほうが広告効果が高いことがわかります。
デメリットは、利益の測定ができないことです。ROASが100%を上回っていても、ROIが100%を切っていれば、広告費を回収できていないことになります。広告全体の投資対効果を測定するには、ROIなどの指標と合わせて判断することが必要になります。
広告の効果測定を行う場合の指標として、ROASは比較的簡単に算出が可能で広告同士の費用対効果が測定できる点で有用です。施策によってはROIやCPAなどの指標が適していることもありますが、それぞれ広告同士のパフォーマンスの比較や広告キャンペーン全体の評価、顧客の獲得単価の比較など、シーンに応じて使い分けることが重要です。
また、デジタルマーケティング施策の選択肢は、Web広告への出広だけではありません。自然検索流入拡大のためのSEOコンテンツ制作や、すでにメールアドレスを獲得しているターゲットへのメルマガ施策は、Web広告では得られないメリットがあります。広告はやめると成果がゼロになるのに対し、SEOコンテンツは継続的な流入が期待できます。メルマガ施策はほかの施策と比較して訴求内容が届きやすいという特長があります。ROASを活用して広告の効果を測定するだけでなく、広告以外の施策の実現可能性も検討してみてはいかがでしょうか。
一例として、Web広告(Google広告)とSEOコンテンツを比較してみましょう。
あるキーワード(月間検索数7,100)を基にWeb広告とSEOコンテンツそれぞれどの程度の効果が期待できるか、表にまとめました。費用はWeb広告が最も低く抑えられますが、検索順位1位を獲得した場合のSEOコンテンツのクリック単価と比較すると、SEOコンテンツのほうが費用対効果が高くなります。検索順位10位となった場合はWeb広告に軍配があがりますが、Web広告は一定のクリック数で掲載終了になることを考えると、長期間の掲載が期待できるSEOコンテンツを検討する余地は十分にあります。
Web広告とSEOコンテンツそれぞれにかかる費用と集客数の変化を表したものです。それぞれの費用が縦棒、集客数が折れ線です。リスティング広告費は毎月73,000円必要で、得られる集客は一定です。SEOコンテンツの場合、制作直後は集客が得られませんが、通常3~6カ月ほどで、集客数が安定します。
11月、12月は広告出稿をストップしたため、集客もゼロになっています。SEOコンテンツは初期費用に加えて、定期的に情報をアップデートする更新費用が必要になりますが、その後継続的に集客することが可能です。
BtoBにおけるコンテンツマーケティングでもっとも重要なのは、「お客様をサイトに誘引すること」と、認知から購買までのプロセスの各段階において、それぞれニーズが異なるコンテンツを配置し、「お客様の”知りたい”にしっかり応えること」です。
その目的を達成するために必要な手段は、Web広告だけではありません。広告は短期間で成果を得ることができ、費やした費用と得られた効果の検証がしやすい点が魅力的ですが、広告をストップすると効果がゼロになってしまうという一面も併せ持っています。
お客様を、商談とその先にある受注につなげるためには、Webサイトを訪問してもらい、行動履歴からニーズや課題を検知し、必要な情報を提供する必要がありますが、そのきっかけはWeb広告以外でも可能です。
当社ではコンテンツマーケティングを「BtoBビジネスにおける有効な顧客獲得戦略」と位置づけ、お客様が持つ商材のコアとなる部分を、それぞれのコンテンツの核となるように企画を立案。コラム記事をはじめ、メルマガ、ホワイトペーパー、動画、広告など、さまざまなチャンネルでの配信を想定して、お客様を効果的に商材につなげ、その先の受注の確度を高めるための提案をいたします。